The Story of AUTECH's customization. プレミアム スポーティの源流を紐解く The Story of AUTECH's customization. プレミアム スポーティの源流を紐解く

AUTECHブランドのコンセプト「プレミアムスポーティ」の源流は、 当社の母体となる(株)オーテックジャパンの初代社長、櫻井眞一郎の車造りまで遡ります。
目指した車造りは、「扱いやすさを重視した動力性能のチューニング」 「ロングドライブの快適性を重視した車造り」「上質な素材と匠の技で仕立てたインテリア」です。

車好きのオーナーが、車をドライブすることを楽しめる車。
それは、ドライバーの操作にいち早く応えるパワートレインのチューニングであったり、 乗り心地を犠牲にしないスポーティな足回りのセッティングであったり、素材にこだわった上質なインテリアでした。

この創業以来の車造りの精神は今も受け継がれ、 AUTECHブランドのコンセプト「プレミアムスポーティ」につながっているのです。
ここからは、「プレミアムスポーティ」の源流となった車造りの「創造と挑戦」の歴史をご案内いたします。

オーテックバージョンの魂を受け継ぎ、高次元のチューニング技術を磨き上げた
「マーチ12SR」「フェアレディZ Version NISMO(Z33型)」
「パフォーマンススペック/ハイパフォーマンススペック」

~量産ハイパフォーマンスチューニングカーの嚆矢(こうし)~

2003年 マーチ 12SR

2003

「オーテックバージョンのチューニングノウハウを量産車に落とし込み、多くのお客さまに走る楽しさを体感して欲しい。」
その想いを実現すべく 「クルマを操る楽しさを提供するエントリースポーツ」 をコンセプトに、マーチ12SRの開発が始まる。

一口にチューニングカーといっても様々なアプローチがある。
オーテックの作るそれは、エンジンとボディ、サスペンションなどをトータルに性能アップしつつも、ベース車両と同じ耐久性、信頼性、整備性を備え、なおかつそれを安定的に連続生産する必要がある。
そのために、開発過程において検証した膨大な方策から、求める性能を実現できる最小限の改造に収束させるのだ。

開発コンセプトに沿った動力性能の実現を念頭に置き、スーパーコンピューターによる空力や車体剛性の解析など、日産直系のファクトリーカスタムメーカーならではの手法と技術を最大限に投入。
サーキット専用のコンペティションモデルではなくストリートモデルとしての楽しさや気持ちよさの追求のため、リアルワールドでの実走行テストを通じ、熟練の開発ドライバーの感性で磨き上げた。
こうして世に送り出されたマーチ12SRは、老若男女問わず愛される大ヒットモデルとなった。

マーチ12SRは、「自動車メーカーが持つノウハウと技術」そして 「開発の匠たちによる経験と感性」により生まれた至宝のカスタムカーであり、これまで以上に高次元な「新世代のチューニング手法」を確立・定着させた立役者でもあるのだ。

~伝統あるレーシングスピリットと新世代チューニング技術のコラボレーション~

2007年 フェアレディZ Version NISMO (Z33型)

2007

クルマ好きであれば日産ファンならずとも、NISMOという名前を知らない人はいないだろう。いうまでもなく、日産のワークスレーシングを担うモータースポーツのプロフェショナル会社だ。(現在は株式会社オーテックジャパンと統合し、日産モータースポーツ&カスタマイズ株式会社のNISMO事業所)

NISMOは、レースの世界とストリートをつなぐ商品を作りたいと考えており、それがフェアレディZ Version NISMOシリーズという企画だった。

これまでも、NISMOはレース活動で培ったノウハウを活かし、S14型シルビアをベースにした「NISMO 270R」やR33型スカイラインGT-Rをベースにした「NISMO 400R」などのコンプリートカーを輩出していた。しかしこれらは、限られた販売経路や保証条件のもとで扱われた、いわば「孤高のチューニングカー」であった。

一方、Version NISMO の仕様は単一仕様では無く、Version NISMO Type 380RS-Competitionというコンペティションモデル(公道走行不可)と、それにストリート用に適合させたエンジンを搭載した ストリートモデルであるVersion NISMO Type 380RS(限定販売)、これらのベースモデルとなるVersion NISMO(販売制限なし)の3仕様がセットであった。

特にベースモデルは、より多くのお客様に通常の量産車と同じように楽しんでもらえる車にすることが必須条件だったのだ。

この命題の解決策がNISMOとオーテックのコラボレーションであった。
NISMOが蓄積した「レースフィールド」のノウハウと、オーテックが培った「ストリートモデルとしてのファクトリーカスタム」の技術の融合がこのモデルの開発で生まれたのだ。

特にボディ性能と空力性能の作り込みに関しては、マーチ12SR開発の経験がなければ、オーテックはNISMOの描く理想を形にすることはできなかったと言えるだろう。

またオーテックにとって、このフェアレディZ Version NISMOの開発を通じ、ヤマハ製パフォーマンスダンパー®活用のノウハウを蓄積したことは、新たな収穫となった。

スポーツカーの刺激を最大限に引き出し、グランドツーリングカーの上質な走りを兼ね備えたフェアレディZ Version NISMOは、後に北米でも販売され、彼の地のNISMOブランドの人気とともに、歴史的なチューニングカーの1台にその名を刻んだ。

そして、NISMOが持つレースフィールドでのノウハウをストリートモデルとして、より多くの方に楽しんでいただくという、現代の「NISMOロードカーシリーズ」の礎となったのだ。

※NISMOとオーテックのコラボは、1994年発売 NISMO 270Rの車両製作の仕上げ工程からスタートとなるが、企画段階からのコラボレーション は、2007年発売のフェアレディZ Version NISMOが初となる。

~オーテックの伝統と現代のチューニング技術の融合~

2007年 パフォーマンススペック/ハイパフォーマンススペック

2007~

マーチ12SR、フェアレディZ Version NISMOの開発経験を経たオーテックは、これらのパーソナルカーやスポーツカーにとどまらず、より身近な、いわゆるファミリーカーをお使いの方にも爽快なドライブフィールを味わっていただきたい、という気持ちから、チューンドミニバンという前人未踏のセグメントに足を踏み入れる。

それが、パフォーマンススペック/ハイパフォーマンススペック という提案である。

パフォーマンススペックは、ベース車両よりも高いハンドリング性能と滑らかな乗り心地を両立すべく、ボディと足回りにチューニングを施した。

さらにハイパフォーマンススペックには、専用チューニングエンジンを搭載。高速道路における合流など、日常的な場面で高い動力性能を実感出来るよう仕上げられている。

オーテックの伝統と、現代のチューニング技術の融合がどのような進化をもたらしたのか、 ライダーシリーズの代表車種を通じて紹介しよう。
パフォーマンススペック/ハイパフォーマンススペックが投入された最初の車種は、E51型エルグランドとC25型セレナだ。

エルグランドは、ミニバンのフラッグシップモデルにふさわしい内外装のカスタマイズに加え、エンジンとボディの双方にチューニングを施したことで、史上最強のライダーとして君臨する。

さらに、ポート研磨まで施されたエンジンチューニングと併せて、変速タイミングやファイナルギヤの変更など、トランスミッションにも手が加えられている。まさに、技術者のこだわりが凝縮された、ミニバンの頂点を極めた存在と言えるだろう。

セレナは、ボディチューニングにより、ワンランク上の剛性感と乗り心地を両立した。専用サスペンションの採用と、車両下部に追加したボディ補強パーツにより、高いボディ剛性を獲得。

さらに、重心が高いミニバンで起こりがちな、左右に揺さぶられる挙動も抑制され、クルマ酔いを防ぐ効果も得られた。ドライバーを含めた乗員全員が、快適かつ爽快にロングドライブを楽しめる、理想のミニバンに進化したのだ。

パフォーマンススペック/ハイパフォーマンススペックのラインアップは、ミニバンだけでなく、人気のハッチバックである、Z12型キューブとE11型ノートにも拡大する。

2車種に施されたエンジンチューニングは、出力アップだけでなく、実用域の駆動力向上を狙い、ベース車両よりも最大トルクが低回転域で発生するよう、エンジン特性を変更。
加えて、電動パワーステアリングに専用チューニングを施し操舵性を高めるなど、ハンドリング性能向上へのこだわりも抜かりない。トータルチューニングにより、扱いやすくキビキビとした走りを楽しめる、ホットハッチへ変貌を遂げたのである。

このシリーズの特筆すべき点は、マーチ12SRで築いた、現代のチューニングノウハウを駆使して、Vol.1で紹介したオーテックバージョンの車造りの思想を、様々なタイプの車種に派生させたことである。
そしてボディの開発には、フェアレディZ Version NISMOで蓄積したパフォーマンスダンパー®による「ボディチューニング」というコンセプトが大いに貢献した。

補強パーツによる剛性アップだけでは対処できない、振動の減衰がパフォーマンスダンパー®の役割であり、操舵の正確さと乗り心地の上質さという、ストリートカーに求められる性能を両立する、まさに魔法の杖だったのだ。

※「パフォーマンスダンパー」はヤマハ発動機株式会社の登録商標です。

マーチ12SRとフェアレディZ Version NISMOの開発を通じて確立した、高次元なチューニング技術を通じて、 オーテックバージョンの車造りの思想を現代に伝承しました。

やがてそれはパフォーマンススペック/ハイパフォーマンススペックに注ぎ込まれ、 より多くのお客さまに、運転する楽しさを感じてもらえる、 新たなハイパフォーマンスチューニングカーの世界を生み出したのです。

次回は、オーテックの商品ラインアップの大きな転換点となったカスタムカーをご紹介します。