AUTECH SPORTS SPEC のすべて

ABOUT

AUTECH SPORTS SPECとは

上質な走りと爽快感を追求する

職人の技巧が溢れるAUTECH進化の歩み

AUTECHが打ち出す、新機軸「プレミアムスポーティ」。
日産オーラ&セレナをベースに、異次元の安心感、上質な乗り味を実現しているのが、
クラフトマンシップが全開投入されたAUTECH SPORTS SPEC。
TEXT◉岡本幸一郎 (Okamoto Koichiro)
PHOTO◉宮門秀行 (Miyakado Hideyuki)

新コンセプトで挑む
AUTECH SPORTS SPEC

「スカイラインの父」として知られる櫻井眞一郎氏のもと、日産直系の特装車開発・製造メーカーである前身のオーテックジャパンが創業したのは1986年のことだ。

以降、「日産のカロッツェリア」として、自動車メーカー直系ならではの技術力やものづくりの匠たちの経験と感性を磨きながら、得てきたノウハウと創造性を活かし、ベースとなるクルマのデザインや質感、走行性能をより高めたカスタムカーの数々をいくつも手がけてきた。

2022年に日産ワークスとしてモータースポーツを担ってきたニスモ社と統合した新会社のNMC(日産モータースポーツ&カスタマイズ株式会社)社が始動してからも、もともとお互いが持つ専門ノウハウや高度な技術力、実績に裏付けられた高いブランド力をさらに強化していくと伝えられたとおり、これまでにも増して力の入ったカスタムカーを手がけている。

オーテックジャパンの代表作であるセレナとノートについては、それぞれ2001年にC24型、2005年にE11型の世代に「Rider」が発売されて以降、ミニバンやコンパクトカーに付加価値を求める層に大いに受け入れられてきた。

その後、2018年にはC27型セレナを皮切りに、これまでのカスタムカーシリーズを統合する形でAUTECHシリーズが生まれた。AUTECHは2024年秋の時点で、エルグランド、セレナ、キャラバン、エクストレイル、キックス、オーラ、ノート、リーフの計8車種がラインナップされている。

モータースポーツ由来の“ピュアスポーツ”を身上とするNISMOブランドに対し、AUTECHブランドはクラフトマンシップによる“プレミアムスポーティ”をコンセプトとしており、同じ“スポーツ”でも方向性はまったく異なるところが特徴で、より幅広いユーザーをターゲットとしている。

そんなAUTECHシリーズにはフラッグシップとしてSPORTS SPECというラインが存在する。

AUTECHでは内外装デザインに創業の地である湘南の海の美しさを織り込んだいくつか共通のアイコンが与えられており、そのスポーティで上質なつくり込みが好評を博しており、ユーザーの認知もますます進んでいるという。

そのAUTECHに対し、パフォーマンスにも爽快なドライブフィールを織り込んだのが、SPORTS SPECとなる。

かつてのRiderの時代にも「HIGH PERFORMANCE SPEC」や「PERFORMANCE SPEC」という走行性能を高めたバージョンが設定されていたが、AUTECHシリーズに代替わりした以降のAUTECHからは、SPORTS SPECの呼称が与えられている。

SPORTS SPECにはユーザーの期待に応えるべく、何かを突出させるのではなく、ふだん使いから週末のロングドライブまで、どんなシーンでもプレミアムな爽快感を楽しんでもらえるように、スタイリング、インテリア、パフォーマンスのすべてにNMCが誇るクラフトマンシップが注ぎ込まれている。

走りに関しても、セレナの場合でパワートレイン、足まわり、電動パワステ等の変更、ボディ補強およびパフォーマンスダンパーの追加から静粛性向上のための遮音対策までトータルで手が加えられている。

内外装を特別に仕立てたAUTECHに、さらにこうして走りも特別にチューニングしたSPORTS SPECのような選択肢が加わるのを待っていた人は少なくないことだろう。次項でその魅力を詳しく掘り下げてお伝えしていきたい。

IMPRESSION

ドライブインプレッション

AURA AUTECH SPORTS SPEC
比類なきつくり込みが生む本質

クラス最高峰
すべてが“絶妙”

オーラAUTECHスポーツスペックほど、つくり込まれたクルマはこのクラスに存在しない。
まさにプレミアムスポーティを具現化したこの仕上がりはAUTECHが放つ本気のクラフトマンシップがなせる業。
TEXT◉岡本幸一郎 (Okamoto Koichiro) 
PHOTO◉宮門秀行 (Miyakado Hideyuki)

上質さと爽快感を実現
クラフトマンシップの塊

基準車からして量販コンパクトカーとしては異例といえるほど上質さをアピールしているオーラを、さらに見た目と走りを、よりプレミアムでスポーティに特別に仕立てたのが、このクルマである。

外観の違いはパーツとしては大型リヤスポイラーとタイヤ銘柄、エンブレム程度なのだが、素のAUTECHと雰囲気がだいぶ違って見えるのは、車高がローダウンされているのも一因だろう。

パッと見では判別がつきにくいかもしれないが、乗ってどうかはすぐにわかるほど変わっている。

まずはリニアで上質な加速フィールが印象的だ。モーターやバッテリーのポテンシャルを引き出し、ドライブモードはノーマルモードがベース車のスポーツモードよりも速くされているとおり、明らかに速い。

ただし、レスポンスは高いがゲインはそれほど上げていないようで、速さを味わえながらも乗りやすい。スポーツモードにするとさらにパワフルになるが、扱いやすさは変わらない。絶妙な案配だ。

もともとコンパクトな車体に対して十分過ぎるほどの動力性能が与えられていたが、スポーツスペックではよりそれが引き立てられて、意のままに操れる感覚が増している。

 

それはハンドリングも同じ。コンセプトどおり上質で爽快なドライブフィールが巧みに表現されていて、スポーツスペックならではの意のままの走りを実現し、そのために各部に手が加えられている。

追浜のグランドライブの周回路を、全開で攻めるのではなく、最大でもタイヤのスキール音が出るかどうかという程度で走ってみたところ、回頭性の良さが印象的だった。

基準車もよくできているが、やや操舵に対する応答遅れや中立の据わりに甘さが見受けられたのだが、スポーツスペックはそれが解消している。微舵の領域からリニアに応答し、しっかりとした手応えがあり、直進安定性も高まっている。

FFにもかかわらず、あたかも4WDのような感覚もあり、リヤのグリップがハンドリングを高め、コーナーの立ち上がりでも小さな舵角を維持したままキレイに曲がっていける。挙動が乱れにくく、4輪がしっかりふんばって路面を捉える感覚がずっとあるので安心感も高い。

そのあたりは、ひととおり手を加えた中でも、リヤをモノチューブ式としたのが特徴のショックアブソーバーや大型リヤスポイラーが効いているに違いない。いずれもNISMOと共通とのことだが、リヤのスプリングレートがNISMOよりも高いと聞いて驚いた。

タイヤもいろいろ試したうえで、最も求めた性能を備えた銘柄に変更したことも上質さに寄与している。

乗り心地は多少硬めながら、衝撃が車体で響かず瞬時に収束するので不快に感じられないのは、リヤエンドのNISMOでは補剛バーを追加した箇所にスポーツスペックではパフォーマンスダンパーを採用したことも効いているに違いない。しかもその性能を十分に発揮できるよう、ブラケットの剛性や取り付けボルトのサイズにまでこだわったという。ファクトリーチューンなればこそなせるわざである。

まさしく“プレミアムスポーティ”。すべてが“絶妙”な仕上がりで、もともと完成度の高さには定評があるオーラが、より安心感があり質感の高い走りを味わえるようになっている。

このクラスと価格帯で、これほどしっかりと丁寧につくり込まれたクルマというのは他に心当たりがない。

SERENA AUTECH SPORTS SPEC
傑作チューンドミニバン

連綿と磨かれるAUTECHの流儀

スポーツとミニバンという異なるベクトルで双方向に進化したセレナAUTECHスポーツスペック。
日常からスポーツ走行まで上質さと爽快感を実現した傑作が誕生した。
TEXT◉佐野弘宗 (Sano Hiromune) PHOTO◉宮門秀行 (Miyakado Hideyuki)

職人技が織りなす
スポーツとミニバンの到達点

ミニバンで走りを追求するのは基本的に難しい。まして、歴代セレナのパッケージレイアウトは5ナンバーサイズ(現在のAUTECHは3ナンバー幅だが)に1・8mを超える全高を持つ。そのクラストップの広さを誇る室内空間は、ミニバンとしては文句なしでも、走りという意味ではどうしても不利となる。しかし、NMCには、3世代前のC25セレナから連綿と磨いてきた“チューンドミニバン”の系譜がある。というわけで、今回試乗したのはデビューしたばかりのスポーツスペックだが、内外装デザインは先に発売されたセレナAUTECHそのものだ。湘南ブルーを思わせるボディカラーやフロントグリル、車体下部のメタル調フィニッシュ専用パーツ、ダーク調アルミホイールなど、今ではすっかりお馴染みとなったディテールの数々で、これがAUTECHであることは誰が見てもすぐに分かる。

随所にブルーのアクセントをあしらったインテリアもAUTECHそのものだが、最新セレナではレザレットのシート表皮が“さざ波”をイメージし立体的な仕立てとなるなど、その美意識はさらに進化している。

注目のスポーツスペックはe―POWERの加速制御を専用に仕立て直したほか、シャシーチューンもほぼ全面的に見直されている。セレナAUTECHのe―POWERは、スポーツモードではパワー感やレスポンスまで全面的に強化される一方で、日常的なスタンダードモードでは、出足や中間加速でスッと前に出るトルク感は増強されているものの、レスポンス部分にはあえて手を付けていない。実際、その走りはシャープというより、まるで大排気量化されたような余裕が印象的だ。電動パワートレインは、こうした味付けが自由自在なのもメリットだが、闇雲に敏感にするような子どもっぽい思想でないところが、いかにもAUTECHらしい。

シャシーも17インチ・ミシュラン・パイロットスポーツ5からなる専用タイヤを筆頭に、バネ、ダンパー、パワステが専用チューンとなるほか、ボディも強化される。一方で、フロントサイドガラスの板厚アップやダッシュのロアインシュレーターなどの遮音対策の強化、ボディの減衰力を引き上げるパフォーマンスダンパーなど、快適性や高級感への配慮を欠かさないのが、AUTECHの流儀だ。

パイロットスポーツ5という本格スポーツタイヤに加えて、バネレートもフロントで約15%、リヤで約20%引き締められていると聞くと、さぞやハードコアなスポーツテイストなのかと思ってしまうが、実際のスポーツスペックの乗り味は、ある意味で正反対といえるものだ。

フットワークは常にしなやかで、特に路面に吸いつくようなリヤの所作に感心する。リヤがピタリと安定しているので、安心感が大きいのだ。これなら家族を乗せての高速巡航も、さぞ気持ちいいことだろう。同時に接地感濃厚で正確なステアリングも素晴らしい。スポーツモードにすると、e―POWERにも適度にレスポンスを増してくれるので、ワインディングでは、ミニバンらしからぬ軽快な乗りこなしを披露する。

スポーツとミニバン。一見するとまったく正反対に思えるベクトルだが、それをうまく両立して、しかも上質さを加えたセレナAUTECHのスポーツスペック。その長い経験に裏打ちされた職人技は、AUTECHマジックと呼びたくなる。

STORY

開発ストーリー

FEATURE:カスタマイズ開発実験部

AUTECHこだわりの原点
職人が語る乗り味と挙動

AUTECHスポーツスペックの誕生から
その魅力に迫る開発者インタビュー。
カスタマイズ開発実験部で主に運動性能開発を担当し、
長きにわたり走りのAUTECHらしさを追い求める髙澤仁氏に聞いた。
TEXT◉岡本幸一郎 (Okamoto Koichiro)
PHOTO◉宮門秀行 (Miyakado Hideyuki)

髙澤 仁 Takazawa Hitoshi

カスタマイズ開発実験部 第1実験評価グループ
主担/シニアエキスパートドライバー

1982 年日産自動車入社。マーチ、プリメーラ、マキシマなど多くのFF車の操安乗心地プロジェクト開発を担当。NMCではノートNISMO(E12型)、AUTECH創立30 周年記念車マーチ ボレロA30の運動性能開発を担当。セレナ、新型オーラAUTECH SPORTS SPECの運動性能開発を担当

「目標を達成するためのアイデアをどんどん提案しました」

意のままに操れる質の高いリニアな挙動を

日産で数々の車種の開発に携わった髙澤氏が50歳を前にオーテックに移籍したのは、後進の若手が十分に成長したことと、新天地で周りから信頼され、AUTECHとしてブレのないクルマをつくるためには、10年という時間がひとつの区切りとなると考えたからだと。
髙澤

オーテック社に来て最初に関わったのはE12のノートNISMOです。まだガソリンのMTもあったので、ちょっとスパイスの効いた方向にしようと思い、先代にどうつくったらいいのか聞きながら、いろいろ自分で考えてやってみました。

ノートにはAUTECHとNISMOの両方があり、同じく“スポーツ”を謳う中でも、“クラフトマンシップ”と“モータースポーツ”由来という違いがあります。
髙澤

もともとオーラNISMOでは“シティレーサー”をキャッチフレーズにしており、ぐいぐい走るような速さを意識したクルマをつくっていたのを見ていたので、そのときからAUTECHならこうした方がいいだろうなというのはずっと頭にあって、いざやろうとなったときにもすんなりいきました。両方同じチームでやっているからこそ、テイストをどう分けるのがいいかというのもだんだん自分なりに分かってきました。

NISMOはコーナリングが速くて限界も高いが、AUTECHはそこまではいらない。かといってベースよりは高くしたい。乗り心地についてもNISMOより少しソフトなタイヤを選びダンピングよくするためにパフォーマンスダンパーを使う。

コンセプトである“プレミアム”というのは、一見わかりやすいようでわかりづらく、開発の中でもさんざん議論したそうですね。
髙澤

具体的にはハンドリングでいうと「意のままに操れること」「乗り心地や車音でいうと変化が少ないこと」のふたつに集約されると考えています。よくいう「意のままに操れる」というのはNISMOもそうですが、AUTECHの場合は、よりドライバーの予想どおりリニアにクルマが動いてくれないと、本当に質が高いとはいえません。

例えばハンドルを少し切ったときにこれぐらい曲がって、もう少し切ったらこれぐらい曲がるというのが予想できて、ドライバーの意図通りにクルマが反応するという意味です。言葉では簡単そうでも、本当の意味でリニアな挙動をちゃんとつくり上げるというのは大変で、AUTECHはそこにこだわっています。リニアさという点ではAUTECHの方がかなりのこだわりをもってます。よく「ワンランク上の……」と表現されるが、それがどういうことかというと、クルマがしっかりしていて、挙動が安定していることだと考えています。

あとは路面が、フラットかコンクリートか凸凹しているかにかかわらず、さまざまな路面を走ったときの変化が小さくなるようにしました。変化に対する依存性をなくすという意味で、車室内音でいうと車速が上がってロードノイズやフロアから伝わる音がうるさくなってくるようなことを抑えようと考えました。

ハンドリングをよくするとどうしても乗り心地が硬くなるところを、できるだけ背反させないようにパフォーマンスダンパーや車体補剛、タイヤの選択などのアイテムを使うのですが、それが思い通りにできたと思ってます。そうすることによって操縦性もあげられ減衰のコントロール幅も広がり乗心地にも余裕がでてきます。

速さや高揚感を追求し、刺激的な味付けとしたNISMOに対して、AUTECHは上質と爽快感をコンセプトとしてどこまでも気持ちよく走りたくなるような爽快さを走りで実現させました。
「各部門が口を出し合うAUTECHのクルマ開発は面白い」
つくり込んでいく上で、開発・設計サイドと実験サイドでは線引きがあるところを、設計の人が実験の領域に入ってきたり、実験の人が設計の領域に入っていったりというオーバーラップがNISMOに比べてAUTECHの方が大きいところも面白い特徴だそうですね。
髙澤

僕も相当、設計に数値の見直しを求めたり、目標を達成するためのアイデアをどんどん提案しました。

走る場所としては、栃木のテストコースで、色々なコースがあります。僕が新しいクルマをつくるときに特に走り込むのは周回路ですね。狙いの性能でもある直進性や車線変更などでの安定性を相当念入りに確認します。

そのときタイヤが冷えてるときはどうで、温まるとどうなるかも確認します。栃木では寒暖差も大きく性能への影響もあり評価データについても温度差で微妙に変わってきます。お客さまにとってタイヤが冷えているか温まっているかというのは関係ないですからね。

あらゆる場面を想定すると。
髙澤

もちろん晴れと雨では違うし、気温でも違うし、風がどう吹いているかでも違うし、日によって同じように走ってもいろいろ違ってきます。そんな環境の変化の中でも性能が大きく変化しなければOKだけど、もし何かあれば直します。
それを確認するために年がら年中、走っているのです。よく雨でもテストできるのですかと聞かれることもありますが、もちろんテストしますよ、お客さまは雨でも走りますからね。

昔はロットによって性能が変わることもありました。その時代の経験があるので、そのあたりの微妙な違いに気をつけて、必ず周回路で限界付近まで高いGをかけて問題ないことを確認しています。

冬には北海道の陸別のテストコースですね。つくったクルマは必ずひと冬を越えてからという感じですね。VDC OFFの場合でも、どのような挙動になるのか確認してます。あとは車が出来上がったらナンバーを取得した生産車で公道も走りますが、そのときはもう最終段階で性能つくりというよりは最終確認です。

NISMOとはパワーステアリングとショックアブソーバーが共通。リアのバネレートがNISMOよりも高められているがモノチューブダンパーが効いて減衰が不足することもなく、パワステ制御は同じだがタイヤやシャシーの違いでフィーリングが異なる。
ドライブモードについてもこだわりがあり、「差別化するためにスポーツスペックをつくったのではない」とのことですが、基準車のいいところは活かしながら、全体としてよりよいものを目指したと。
髙澤

セレナの場合、エコはエコでそのとおりエコドライブしてもらえばいいと思いますが、よく使われるであろうスタンダードは、気持ち良く走れるように基準車のスタンダードとスポーツの間ぐらいにして、スポーツはたまにひとりで峠などを走るときに楽しめるようにしました。

一方のオーラはちょっと違ってて、NISMOのことも考えながら、エコモードは基準車とNISMOとの差を参考にスポーツスペックではちょっと上げています。僕らの間では『走れるエコ』と呼んでいます(笑)

スポーツモードは、NISMOのNISMOモードはわかりやすく速さを感じられるようにしていて、それはそれで魅力的なのですが、AUTECHでは扱いやすくするのもプレミアムだろうということで、ふだん乗りでも扱いやすいようにしました。

僕らは評価を専門にやっているので、クルマに乗るとどうしてもアクセルを丁寧に操作してしまうので、お客さまの普段使いとは違ってしまいます。なので運転に自信のない人をはじめ様々な人にも運転してもらって確認します。 ずっとスポーツモードで、足グルマ的に使い、車庫入れも試したりして、そのときに少しでも使いづらいと感じたら違和感がなくなるまで直します。

誰かに運転してもらって、後席に同乗したり、特にパフォーマンスダンパーを、不整路でのダンピングで確認したりするとのことですが。
髙澤

セレナはそこがとても重要だったりしますからね。そのときに、どんな運転をしているかもしっかり見るようにしています(笑)

そんな髙澤氏の夢は、もう一度A30のようなメモリアルなクルマをつくることだという。ひょっとしてそれは「A40」なのだろうか、大いに期待せずにいられない。
FEATURE:商品戦略・企画部

あらゆる走りの
上質がつまった
AUTECH
ならではを生み出す

AUTECHスポーツスペック開発者インタビューお次は商品戦略 企画部編。
車両の企画コンセプトをプロデュースするスペシャルチームだ。
個性豊かなキャラクターを有するチームが考える「走る喜びと安心感」
「上質さと爽快感」といったコンセプトについて深掘りする。
TEXT◉佐野弘宗 (Sano Hiromune)
PHOTO◉宮門秀行 (Miyakado Hideyuki)

永澤 清和 Nagasawa Kiyokazu

商品戦略・企画部 部長

1992 年入社。初代キューブ&エルグランドライダー、ステージア260RSの企画、販売促進を担当。その後、商品企画専任となり創立30 周年記念車マーチ ボレロ A3 0 や、新ブランドAUTECHシリーズをまとめた。早朝の箱根ドライブとサウナ&日光浴が仕事の原動力と言う、オーテックを知り尽くす男。

饗庭 貴博Aiba Takahiro

商品戦略・企画部部長兼ニスモチーフプロダクトスペシャリスト

1994年日産自動車入社。R35 GT-Rのシャシー設計を担当。その後、オーラNISMO 、スカイラインNISMOの商品企画を担当し、新型オーラAUTECH SPORTS SPECでは、オーラNISMOの知見を活かし、いかにAUTECHらしい乗り味を実現するか議論を重ねた。休日はR35でのドライブ。

土合 雄大 Doai Yudai

商品戦略・企画部

2020 年入社。商品企画担当としてAUTECHセレナ、ノート、オーラを担当。オーラ&セレナAUTECH SPORTS SPEC 両車の商品企画をまとめた。学生時代は自動車部に所属し、ジムカーナや軽耐久レースに参戦。根っからのクルマ好きであり、走る楽しさ・高揚感・爽快感を多くの人に届けたいと活動する熱い男。

「走りと先進安全を両立する開発やチューニングに時間をかけた」

上質さと爽快感、それがAUTECHスポーツスペック

かつては別会社だったニスモ社とオーテック社は2022年4月から「日産モータースポーツ&カスタマイズ」として両ブランドを手がけることになりました。
永澤

これまでもNISMOロードカーはオーテック社のものづくりノウハウの下で送り出していました。NISMOとAUTECHは特別な日産車を求める熱いお客様に支えられている点では一緒ですから、同じ会社で手がけることは自然な流れだったかもしれません。

饗庭

NISMOは純粋なモータースポーツの血統であり、AUTECHはクラフトマンシップの血統ですが、「走る喜びや操る楽しさ、安心感」という根幹は共通しています。その上でモータースポーツ由来のNISMOはパフォーマンスを重視した「速さと高揚感」、対してAUTECHはプレミアムな「上質さと爽快感」がコンセプトです。私自身はノートオーラ(以下、オーラ)でも、NISMOとAUTECHスポーツスペックの両方の企画を担当していますが、それぞれの味付けで迷うことはまずありません。

以前はノートAUTECHでしたが、24年6月のマイナーチェンジ以降のAUTECHはオーラベースとなり、年末にはスポーツスペックも用意されました。
饗庭

当初はオーラにNISMOがあることもあって、AUTECHは5ナンバーのノートをベースとしました。ただ、実際に販売してみると、お客様がAUTECHに求めるのは“さらなるプレミアム”ということで、やっぱりオーラのAUTECHがほしいという声が多かったんです。

土合

AUTECHのお客様はご自身のこだわりを追及される方が多いです。ノートAUTECHの時から、オーラ専用のBOSE(パーソナルプラスサウンドシステム)に対する要望も非常に強いものがありました。

饗庭さんはオーラNISMOの企画も担当されているわけで、オーラAUTECHスポーツスペックの企画にはご苦労されたのでは?
饗庭

確かに、走りについては議論がありました。われわれはオーラNISMOの走りにも自信を持っていたので、AUTECHも走りの部分は共通でいいんじゃないか……という意見もありました。

ただ、クルマの乗り味は、そのデザインから想起されるイメージとリンクすべきと思っています。最終的にはスポーツスペックは独自の味とすることにしました。最初に言ったように、その味つけに迷うことはありませんでした。

海面のエレガントなきらめきをイメージしたドット仕上げフロントグリル、波打ち際の白波の美しさを表現したボディ下部のメタル調フィニッシャー、そしてブルーのシグネチャーランプなどがAUTECHデザインのお約束だ。
「AUTECHの走りを追求したモデルへのニーズは強かったんです」
永澤

AUTECHというブランドを完成させるには、スポーツスペックがあるべきというのが基本的な考え方です。歴代スポーティミニバンカスタマイズが好評だったセレナとプレミアムコンパクトカー市場を開拓したオーラに、AUTECHスポーツスペックは欠かせません。実際、NISMOの走りもお客様に大変好評をいただいている一方で、AUTECHの走りを追求したモデルへのニーズは強かったんです。

土合

ドライビングプレジャーを自身で楽しみたいお客様に向けたNISMOに対して、AUTECHのお客様は同乗する家族も含めたプレジャーを求める傾向にあると言えるかもしれません。ワインディングやサーキットが似合うのがNISMOとすれば、AUTECHは路面の荒れやうねりがある西湘バイパスのような道を、ビシッとまっすぐ走るのが喜びとなります。

饗庭

NISMOのレッドアクセントは純粋なモータースポーツ好きの男性にはよくても、共有する奥様の中には「やりすぎ」と感じられるかもしれません。家族の声により耳を傾けるのが、AUTECHの典型的なお客様像といえるかもしれません。

例えば、独身時代なら迷わずNISMOを選ぶようなカーマニアも、家族ができるとAUTECHに惹かれるようになると……。
永澤

ファミリーステージが進んだことで、NISMOからAUTECHに乗り換えられるお客様はめずらしくありません。

土合

大人数やご家族で爽快感を感じていただけるクルマが、セレナAUTECHです。“チューンドミニバン”に関しては、われわれはパイオニアであるという自負があります。

セレナAUTECHのお客様には明確な特徴があります。歴代のセレナAUTECHを乗り継ぐお客様が一定のボリュームでいらっしゃって、特にスポーツスペックのお客様は自分の走りの理想像をしっかりお持ちで、お客様アンケートの回答も飛びぬけて濃いんですね。

オーラにしてもセレナにしても、まずは内外装デザインを仕上げた標準のAUTECHが出て、さらに走りを特別にしたスポーツスペックの発売は少し遅れました。
永澤

ベース車の性能がものすごく良くなったこともあり、スポーツスペックでわれわれが求める性能を担保するために、開発に時間がかかったというのが正直なところです。ただ、先代のC27セレナでも、スタイリングでAUTECHを選んでいただく方、更にパフォーマンスを求める方が半々でしたので、まずはAUTECHをいち早くお届けし、そして満を持して今回のスポーツスペックという順番になってしまいました。

土合

AUTECHは日産の正規ディーラーで他の新車とまったく同じ保証を付けて販売します。しかも、プロパイロットなど最新の先進装備も一切犠牲にせずに、AUTECHならではの特別な走りを与えるのは簡単ではありません。

永澤

今回はAUTECHならではの走りと先進安全を両立する開発やチューニングに時間をかけました。そのぶん自信をもって送り出せる車に仕上がっています。クラフトマンシップを注ぎ込んだスポーツスペックは絶対に期待を裏切りません!

インテリアを彩る
AUTECH ブルーのあしらい

ブラック基調のカラーにAUTECHブルーのアクセントがあしらわれたAUTECHのインテリア。ダッシュボード等に採用されているダークウッド調のパネルは紫檀(したん)柄でブルーパールがさりげなく輝く。専用シートには、ブルーステッチとシートバックにAUTECHの刺繍が施される。

Pick up!

リンク集

オーラAUTECH SPORTS SPEC 発表動画

試乗インプレッション動画 / 記事